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中国北部では、年越しのごちそうは餃子である。中国の餃子は、家族だんらんの食卓を象徴するといってもいい。しかし、そのつかのまの幸福が、時代の波に押し流されてしまう時代もあった---'50 年代の中国。毛沢東体制下、政治が激変する時代に生き、運命をもてあそばれるひとりの女性。その息子・鉄頭が母の姿を語るという設定だ。 鉄頭に青い凧を作ってくれた実父は、鉄頭が幼いころに強制労働に送られ、事故で死んだ。母は夫の同僚と再婚している。この年の年越しはにぎやかで、家で作った餃子が近所にふるまわれ、「中に何を入れた」「羊と白菜。羊は高いから少しさ」と、味談義もさかん。白菜と羊の肉というあたりが、中国北部らしい取り合わせだが、さらに北上してロシアにいくと「ペルメニ」になる。反対に南部へ下りると、羊肉よりも豚肉を使うことが多くなる。 |
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餃子は「子どもに恵まれる」といわれ、また中国の昔のお金の形をしていることからも、縁起のいい料理とされている。年越しに大量に作っておくのは、日本のお餅のようでもある。この年越し餃子は、外においておけば、寒さで自然に冷凍されて保存がきくらしい。それをゆでたり蒸したりして食べるそうだ。また、日本では「焼き餃子」が主流になっているが、本場中国では、餃子といえば「水餃子」である。 鉄頭の母も餃子作りに忙しい。ストーブに中華鍋がかけられ、湯気がたっている。ゆであがった餃子が皿に盛られていき、優しい継父はそれを手伝っている。鉄頭一家にとって幸福なひとときだ。突然、継父が倒れ、床に飛び散る餃子。継父は長期の過労と栄養失調が原因で、2カ月後に息を引きとる。 母が鉄頭の将来を考え、共産党幹部と3度めの結婚をしたころ、母の兄とその恋人もまた、共産党の政治弾圧による別れを余儀なくされていた。別れを告げに来た恋人と兄とともに、家族は餃子の鍋を囲む。せめてものごちそうで、彼女を送り出そうという心づかいだ。兄が恋人に向けて言う「食べてくれ。餃子は人を送るしるしだ」。別れのときも、祝いの席にも、餃子は家族の忘れがたい日に食べる、大切な料理なのかもしれない。 |