いつかゆっくり甘くなる……青いパパイヤは少女の香り

青いパパイヤの香り

1993年 フランス・ベトナム
監督/トラン・アン・ユン
出演/トラン・ヌー・イェン・ケー リュ・マン・サン





 パパイヤ、と聞いてまず思い浮かぶのは、あの黄色くてネットリ甘い南国の果物。しかし熟する前のパパイヤは胡瓜にも似た味がする。この作品は1951年のベトナム・サイゴンが舞台。田舎から奉公にやって来た少女ムイの成長を通して、その屋敷に住む人々の生活を描いた作品だ。
 ムイは「オカズが少ない時は塩を多めに入れる」「野菜を炒めたらいったん火から下ろして、肉を炒め終わってから合わせる」といった料理の実践の知恵を、同じ奉公人であるおばさんから教わる。料理の作り手の心をしっかり教わったムイは、成長した後に音楽家の青年の家に奉公に行くが、そこで作る料理も、実に細やかな心づかいに溢れている。ご飯は冷めないよう蓋をして、料理も素材感を大切にし、盛りつけも美しく工夫する。小さなお盆にのせ、大切そうに運ぶムイ自身も、健気であり、美しい。

 また、パリに留学していたという、新進作曲家である青年の家の室内は、壺や仏像など東洋的なものと、ピアノを中心とした西洋的なものとが融合していて、エスニック風のインテリアとしても興味深いシーンが多い。
 では、肝心の青いパパイヤはというと、まず皮をむき、包丁で垂直に切れめを入れる。その後、削ぐように包丁を動かすと、線切りのような状態になる。ムイは簡単そうに作るけれど、実際にやってみたらむずかしいかもしれない。そして、タイならナンプラ−、ベトナムではニョクマムと呼ばれる魚で作る調味料をベ−スに、唐辛子、酢、砂糖、ライムやレモンの汁を混ぜたものをかける。決して御馳走ではなくベトナム人の家庭の味、というものだろう。
 熟す前のパパイヤは、原産国ならではの味。そして、青いパパイヤが熟していく過程は、澄んだ瞳をもった少女ムイの成長の物語にもふさわしい。



MENU 音楽家のための夕ごはん 
ベトナム料理は、中国をはじめ、インド、フランス、マレーシアなどさまざまな国の料理の影響をうけて、繊細な味わいと香り豊かな料理としてはぐくまれてきました。盛り付けも美しく、フレッシュなハーブや野菜をふんだんに使い、魚、海老、肉、麺、デザートとバリエーションも豊富。主人公のムイが、青年音楽家の台所でよそっているおいしそうなご飯も、ベトナムではお米を一度ゆでてから蒸すのが一般的です。

作り方

◆焼いたなすといんげんのサラダ
1. なすは1cm幅に切り、軽く塩をふって約30分おき、ペーパータオルで水気をふき取る。
2. いんげんは塩を加えた熱湯で固めにゆで、氷水にとる。
3. フライパンにサラダ油を熱し、1のなすに焼き色をつけて取り出す。
4. そのあとのフライパンに、にんにくと玉ねぎを入れて炒め、塩、こしょうし、豚肉を加えパラッとするまで炒める。
5. 皿にいんげんを放射状に並べ、その上に3のなすを盛りつけ、中央に4を散らす。
6. たて切りにしたエシャロットを飾り、ドレッシングをかける。

◆海老のベトナム風炒めもの
1. 中華鍋にサラダ油を入れ、にんにく、長ねぎ、赤唐辛子を加えて熱する。
2. にんにくがきつね色になったら、レモングラス、きくらげ、玉ねぎ、海老を加え、強火で炒める。
*かき混ぜすぎないのがコツ。
3. 海老の色が変わったら、合わせ調味料を加え、全体にからめる。
4. 皿に盛って、赤唐辛子を上に飾る。