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料理上達の一番の秘訣は、やっぱり実際に作ることだろう。「知ってるはずなのにうまくいかない」ということは料理に限らず、案外多いものだ。 妻に家出された朝、主人公・テッドが、息子のビリ−にせがまれて作るフレンチ・ト−ストがそのいい例。フレンチ・ト−ストは、牛乳と卵を合わせたものにパンを浸し、フライパンで焼くだけの簡単な料理。しかし料理することに慣れてないのに加えて、妻の家出で気が動転していると好意的にみても、テッドの料理はいただけない。卵も満足に割れないし、パンを浸すためには、ボ−ルの中で牛乳と卵を混ぜなければいけないのに、彼はマグカップに卵を割ってしまう。おまけに熱くなった把手を素手で触り、その熱さでフライパンを落としてフレンチ・ト−ストは台無し。なのに彼は自分の非を認められない。「こんな楽しい朝は久しぶりだ」などと見えすいた意地を張っていた彼、失敗すると今度はいきなりヒステリ−を起こしてしまう。 |
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テッドは知ったかぶりをしないで、キッチンに置かれている『ジョイ・オブ・クッキング』をひもとけばよかったのだ。この本は、アメリカ人の料理バイブル的なクッキング・ブックなのだから。妻のジョアンナは外で働きたい女性だったのに、テッドに頭ごなしに反対されて一人で苦悩したあげく家を出ていった。もしかするとジョアンナは料理が得意ではなく、でもこの本を見ながら夫と息子のために一生懸命に料理を作るような、真面目な女性だったのかもしれない。 ストーリーの後半、テッドはもういちどフレンチ・ト−ストを作る。家出した妻と息子の養育権を争い、負けが確定したあと、息子と一緒に作るのだ。初めの時とは大違いで、テッドがちゃんとボウルに卵を割ると、ビリ−が黙ってパンをほおり込む。フライパンはほどよい温度に熱くなっている。そのグッド・リレ−ションに、二人の愛情が以前より深まり、共に助け合ってきたことがわかる。甘くて柔らかくて黄金色に焼けたフレンチ・ト−ストは、こんな親子の、静かな信頼に満ちた朝によく似合っていた。 |