朝食に手間ひとつかけるのが、イタリア式人生の味わい方

月の輝く夜に

1987年 アメリカ
監督/ノーマン・ジュイソン
出演/シュール ニコラス・ケイジ





 最初の夫に先立たれ、2度目の結婚を控えているロレッタは37才。ニューヨークはブルックリンに暮らす、イタリア系アメリカ人だ。母親と同居しているが、この母が朝食に作るフランスパンのトーストは、誰でもまねをしたくなる逸品。トースターで焼いたシンプルなトーストより、ちょっと手間がかかるけれど、こってりとおいしそう。こんがり焼き目のついたパンに卵の黄色、赤いものが見えるのは、ピーマンかトマトだろう。この配色もきれいで、食欲をそそる。
 イタリアには、フランスともイギリスとも違った、イタリアらしいパン料理がいろいろある。グリルしたパンにオリーブオイルをぬり、ガーリックをこすりつけた「ブルスケッタ」。その上に、トマトとバジルをのせる。また、鶏のパテやオリーブのパテをのせた「クロスティーニ」。シンプルで素材感が生きているところは、イタリア料理全般にいえることだ。
 さて、イタリア女性は料理も上手だが、恋にも情熱的というわけで、ロレッタは、婚約者ジョニーがいない間に、ジョニーの弟ロニーと恋に落ちてしまう。情熱的なのはロレッタだけではなくて、彼女の父親の浮気や、叔父さん夫婦の恋物語まで、映画では軽くロマンティックに描かれている。すぐに縁起をかついだり、まずいことになると教会に懺悔をしに行ったり、デートではオペラに誘う……といったエピソードの数々もご愛嬌。
 ロレッタは初めてロニーの家を訪問し、ひとり暮らしで心の満たされない彼のために、スパゲッティを添えたステーキを作る。ちゃんとエスプレッソ付きで。食べることを粗末にしない人たちなのだ。ロレッタの母親も、ひとりで外食するときでさえ、ちゃんとマティーニのアペリティフから始める。ロレッタ一家は、決して贅沢に暮らしているわけではないけれど、誰もが自分と、そして相手を喜ばせることをちゃんと知っている。人生を楽しむということは、高いお金を払ってレストランにいくことより、朝のトーストにちょっと手間をかけられるかどうか、ということなのかもしれない。



MENU 月と太陽の朝ごはんトースト
いつもより、ちょっとおしゃれなあさごはんにしたいときは、イタリア風のこんなトーストはいかがですか?材料はキッチンをちょっとさがせば出てきそうな、身近なものばかり。作り方もご覧のとおり、とてもシンプル。でも、ロレッタのお母さんのように落ち着いてつくるには、あらかじめ、映画で予習しておくことをおすすめします。マグカップにたっぷり注いだコーヒーといっしょに、ナイフとフォークを添えてテーブルへ!

作り方

月のトースト
1. 約2.5cm暑さに切ったフランスパンの中央に、卵が入る程度の穴を開ける。
2. フライパンにオリーブ油を入れ中火で熱し、パンの片面に軽く焼き色をつける。
3. 2. のパンを裏返し、穴に卵を割り入れて塩、こしょうし、弱火で卵に火を通していく。
4. 卵が半熟になったらひっくり返し、卵の表面をさっと焼く。

太陽のトースト
1. から 2. 月のトーストと同じ要領で。
3. トマトとアンチョビをオリーブ油で軽く焼き、裏返したパンの穴に入れて焼き上げる。